長唄の魅力

そもそも長唄とは、江戸時代に歌舞伎の伴奏音楽として成立した三味線音楽の一つです。
歌舞伎の後ろでずらりと横一列に並んで唄を唄ったり三味線を弾いたりしているのが長唄の演奏家です。

歌舞伎の伴奏音楽として成立した長唄は、長い歴史の中で、例えば「この場面にこんな音楽が欲しい!」とか「今流行っているあの曲使おう!」という具合に、お芝居の題材や時代のニーズに合わせて、能、狂言、民謡、小唄、俗曲などなど…日本のあらゆる他ジャンルの音楽要素も吸収しながら発展していきました。

明治時代にはオペラやバレエと同じように長唄も歌舞伎から独立し、純音楽として様々な作品が生まれ、新しい音域の三味線の開発や、色恋、仇討など大人向けの題材から離れた子ども向けの童謡作品も生まれたりと、誰もが親しめる家庭音楽として全国に普及していきました。

礼儀作法を学べることからも当時は子どもの習い事ランキングでは常に上位となり、ポピュラー音楽として爆発的な人気を集めました。

そんな多くの要素を含む長唄は、今では「日本のフルオーケストラ」と呼ばれることもある程で、子どもから大人まで幅広く親しまれています。

長唄は「唄方」と「三味線方」の2パートに分かれます。

「長唄」というのは「クラシック」や「ロック」のように音楽ジャンルの名称ですので、唄を唄う人を「長唄の唄方」、三味線を弾く人を「長唄の三味線方」と呼びます。

舞台ではこれに小鼓、大鼓、太鼓、笛の四拍子を基本とする「囃子方」も含め「唄方」「三味線方」「囃子方」の3パートが完全分業制で演奏します。

各パートがそれぞれに声を掛け合い、時に息をぶつけ合い生まれる「間」こそが、長唄の最大の魅力です。